本その2
2020年09月07日
イラストレーターの平野恵理子さん、「和菓子の絵本」(2010年あすなろ書房)で出会ってそれ以来のファンです。今年4月に「五十八歳、山の家で猫と暮らす」(亜紀書房)を出版されました。お母様が亡くなったあと、一時避難のつもりで八ヶ岳の麓の家に暮らして2年余り、山での不便な生活、特に冬の寒さの苦労、虫との邂逅、自然の美しさ平野さんの文章は飾らなく自然体。山暮らしなのに、なんと平野さんは車無しの生活というから、驚きました。
孤独という言葉にはどこか負の印象があるが、いい孤独、心地よい孤独もあるのだ。一人だって、ひっそりと愉快に過ごせることはある。孤独という言葉でなければ、孤立のほうが近いだろうか。けれどこの言葉も一人ぼっち感が強い。いっそ「孤独立」という言葉を作ったら、少しは一人でいるひっそりとした愉快感が表現できるか・・・本を読みながら歳が近いせいなのかひとり身という同じ境遇だからだろうか思いがぴったり重なります。
お母様の想い出と不在を噛みしめながらも、ひとりで暮らす深いこころの豊かさを綴る珠玉のエッセイです。
ベランダの餌箱に集まる鳥たちの観察が繊細で思わずネットで鳥たちの姿や鳴き声を調べてしまったほど。平野さんの衣食住、植物や虫や小鳥たちの観察、見つめる眼差しは緻密でユーモアのセンスが溢れています。ページをめくりながら、ときどきクスっと笑うすてきな本です。
いつかお会いしたいな。魅力的な平野さんに・・・